食べ物とか旅行とか

東京在住 アラサー社会人の備忘録です。

中国旅行8 中国の縮図

 さて、今日は西安から成都へ向かう日。120元もしたシングルルームのぼろ3つ星ホテルとはおさらばだ。チェックアウトはだいたい昼の12時。できるだけ部屋でだらだらして昼前にチェックアウト。出発の時間は15時なので、西安をぐるりと囲んでいる城壁に上ってみる事にした。一応正式に上れる事になっている?のは2か所あるようで、そのうち一方の西門へ。どこから入るのかな〜と思ってぶらぶらしていたら、なんと入り口は大きい車道の向こう側。孤島のようになっており、どっから行くにもこの車びゅんびゅんの通りを渡ってたどり着かなければならない。おばあちゃんとか大変じゃないの。上ってみると城壁は想像以上に幅が広く、片側1車線のちょっとした道路より広いだろう。ただひたすらまっすぐに壁が続いていて、気持ち良い。やはり古い建築物が街中に共存していると言うのは雰囲気がいいものだなと思う。
 少し早めに駅に行こうとホテルに戻って、なんとなくホテルの人に切符を見せて「これから成都に行くんだ」って言ったら、なにやらわめきたてだして、その中に「バースー」という言葉が聞こえた。は?バス?Bath?いや、Bus?? 電車じゃないの?汽車って書いてあるけど。ちょっと焦る。確かに切符売り場のおばさんは「寝台はないよ、イスだよ、ばか!」って言ってたような気がするけど。。そして急いで電子辞書(SR-T5030 セイコー中国語辞典付)で調べてみたら、なんと「汽車」とは「バス」のことであり「口巴 士」とも書くらしい。げっ、てことはバスのチケット買っちゃったのかな。でも今日の電車の切符はもうないだろうし、電車より100元以上安いから、仕方ないこれで行こう。でも電車でさえ16時間位かかるのに、バスだと何時間かかるのやら。エジプトでは17時間も乗ったじゃないかと自分を励ましながらバス駅へ。着いてみてわかったが、切符を買った切符売り場は大きなバスセンターになっており、ものすごい数のバスが所狭しと並んでいた…。どこに成都行きが?誰に聞いてもよくわからない。もう15時だよ!っていう時、通りかかった制服を着たおじさんに聞くと一番奥を指差す。行ってみたら、あった!切符を見せてこのバス?って聞くと乗れとのこと。切符の席の種類の欄に「豪車」って書いてあったのに(電車の軟座のことかと思ってた)、「豪」とは程と多いおんぼろバス。エアコンがかろうじてついてるだけじゃん。しかも席の感覚が狭すぎてまっすぐ座れない。これで明日の朝3時に放り出されても、どうすりゃいいってのよ。でも今は行くしかあるまい。なんか匂うな〜と思ったら、なんと彼らはバスの中でさえたばこを吸っていた。しかも乗った時点で僕の周りで4人。あー、このバス窓開かないし。エアコンが動き出したのでなんとかましに。出発まで他のバスを窓から眺めていたら、両隣りは「寝台バス」だった。中国では長距離の移動に結構あるようで、バスの中にすごく小さい2段ベッドが3列並んでいる。足ものばせないくらいの長さだ。たぶん150か160cm位かな。あれは確実に長距離なのだから、あれはあれできついかも。噂では、床にうかつに靴やカバンを置いておくと、上段に寝ている人間が吐く痰によっておそろしいことになるとか。あーこわい。
 ひとごとだと思っていられるのも最初だけ。こちらでもぺっぺと痰飛ばし合戦が始まっていた。いや実際には戦っちゃいないけど。こちらの人はなぜか必ず事前に「かぁ〜〜〜〜」というおじさんがよくやる効果音をつけてくださる。老いも若きも。しかも始まり出したら結構止まらない。5分に1度くらいはどこかしらで聞こえる。僕はこの音がとても苦手なのでノイローゼのような気分になった。12時間といえば、だいたい東京ー山形間をJRバスさくらんぼ号で往復したくらいと同じだろう。快適さは全然違うがなんとかなるだろう。と言い聞かせ出発。
 しばらく普通の道を走っていると思ったら、夕方からやけにでこぼこした、いろは坂のような山道へ突入。後から聞いたら高速道路がない区間を走るため山を越えながら走るのだそうだ。しかし、本当にいろは坂よりきついカーブと、未舗装のでこぼこ道が続き、窓の外を見たら霧で下が見えない程だ。ついに後ろの席の女の人がリバースしてしまった。通路にあるごみばけつに、痰を飛ばしに来たのかと思いきや、いきなり花火のように豪快に。ああ、鬱。深夜になってもまだ山道は終わらず、夜1時位にやっとどこかで止まった。でもまだ山だなここ。と思うとどうやら夕食タイムらしい。15時に出発してはや10時間。初めての休憩。3時に着くなら1時に休憩なんておかしいよな、と考えながらもう諦めつつ、ご飯を食べたらトイレに行きたくなりそうなので買っておいたクッキーを食べて我慢。再びバスが走り出すも、なぜかエアコンが止められ、窓も開けられず、エンジンは真下にあり、軽い蒸し風呂状態。「暑い!」と叫ぶが運転手には聞こえないふりか、聞こえてないのか。その状態でたばこを吸いまくり、ぺっ!と飛ばしまくる地獄絵図の中でひたすら、あることを念じてしまった。
 朝日が上り少しずつ風景が明るくなり始めても今の心境には全然すがすがしくも、美しくもない。もうどうなってもいいや、このバスがもし山から転げ落ちてくれればあっという間なんだろうな、とか考え始めた頃ようやく家らしきものがぼちぼちと見え始めた。そして高速道路登場!走りに走って午前8時。5時間遅れで成都駅へバスは到着した。外の空気がまた吸えるとはまるで夢のよう。涙が出てしまいそうになった。これから切符買う時はよく気確認して、とりあえず駅以外の場所では買わない事にしよう。「汽車」=「電車」とは限らない。まるで悪夢のような長い1日が、やっと終わった。