食べ物とか旅行とか

東京在住 アラサー社会人の備忘録です。

そうさ僕らはアドベンチャー

 ペーパードライバーな友人が「仕事で車に上司を乗せるかもしれないから、車庫入れの練習がしたい」というので、レンタカーを借りてどっかで練習をする事に。だいたいレンタカーは6時間でも12時間でも料金は変わらないのでじゃあ12時間借りてどこかにでかけて、そこの駐車場で練習をしようと生協で予約。生協で予約すると若干安い。が、マツダレンタカーはなんと近隣の支店全て乗用車は満車とのこと。びっくり。マツダって人気あったっけ。

 で、行き先にしたのは千葉県房総半島にある鋸山(のこぎりやま)という所。事の発端はこちらのブログだった。(id:amanomurakumo:20060807)

 大仏を見るために「『うわあぁぁー』と発狂しそうにな」るってどんだけだよ!と思って気になっていたのだ。当日は小雨の降りしきる天候であったが気にせず決行。高田馬場から一般道をひた走り、「地方の幹線道路ってどこもこんな感じの見た目だよねー」というそのまんまの道路をひたすら走る。事前に検索した時には約120キロと出ていたので、時速60キロ平均でだいたい2時間ちょいかななんて考えていたアマチュアの私がバカだった。なんかしらないけど4時間近くかかったもの。途中飯食ったりはしたけど。


 到着したのはロープウェイ駅。悪路よばわりされていた下りの路も気になっていたので友人には特に何も言わず「片道っしょ」。私は千葉のさきっちょのちょーしけた大仏公園 くらいにしかイメージしていなかったのだが、思ったより駐車場も広く、15分間隔のロープウェイも待っているうちに客はどんどん集まってきた。雨降ってんのに。ロープウェイでは乗る前にカゴ前で写真を撮られ、それを山を下ってきた時に1枚1000円で販売しているらしい。客の数に対して写真の販売員が3人もいたのには笑えた。が、そこそこ売れていたのにもびっくり。


 ちゃんと記憶していなかった私が悪いんだけど、山頂についてからさらにお寺に入場するのに600円も払うのか!たかっ 
しかし私の目的は車庫入れ練習ではなく、修行僧の気持ちを体験する事なのでチケットを買って入場。展望台はちらっとチェックして、さあ大仏へ!…と思ったが、ここすげーー。まず海側の景色が見えるのだけど、曇っているにもかかわらずいい眺め。1つは山の傾斜がかなり急なために、高低差と海への距離が相反しているためだと思われる。中学校の時に保田の臨海学校とかあったなーとか思いつつ、保田の海岸を眺める。が、雨がまた少し降ってきたので先へ。

 
 最初に現れたのが二者択一。先の見えない階段を上り続けるか、左の脇道へそれるか。どっちが正しいのか分からないが、なんとなく左へ行って大正解。百尺観音というのがあって、ヨルダンのペトラ遺跡を彷彿させる感じ。確かもっと違う名前のがどっかにあったような気がするけど、インディージョーンズのやつと言ったら通じるかな。行った先にあるのは神殿ではなくて観音様。大隈講堂が125尺だからそれより少し小さいって事は、やっぱそこそこ高い。そこに行くまでの道も切り通しみたいになっていて声が響いて気持ちよかった。


 
 次に階段を上ると百尺観音の上に上がれ、そこから断崖絶壁の風景を楽しむ事ができる。眼下には樹海みたいな森がひたすらうっそうと。帽子が飛ばされそうになった。ここは地獄のぞきという場所になっていて崖っぷちまで歩いて行けるようになっているんだけど、実は本当の地獄はここから先だった。


 ちょっと行くと「大仏近道」というのと、「大仏、なんとか、かんとか」という道が分かれる場所がある。目指す大仏には近道で行きたい気持ちも分かるが、どうせ行くなら大仏に行くまでになんとかとかかんとかってものが見られるならそっちでもいっか。と思いそちらへ。しかーし、これたぶんものすごい遠回り。ひたすら階段を上ったり下ったり、そしてまた上ったり。時々木の上に猿がいて、そいつが動くたびに木から雨粒がざーーーーっと落ちてくる。が、小雨の中の小さなお地蔵さん達はとても良い顔をしていた。というか、みんな違う顔をしていて首をうなだれていたり、傾けていたり、まっすぐを見ていたり。なかなか楽しくもある。雨のせいか人が少ないのもまた良い。あじさいもきれいだった。


 いよいよ大仏にとーちゃーく。どうやら日本一でかいらしい!パンフレットには鎌倉と奈良の東大寺との高さの比較があったが、圧倒的に鋸山の勝ち。私はこの2つのどちらも行ったけどもう忘れた。が、今日のは忘れられなくなりそうだ。ででーーんと現れた大仏様は背景に広がる空も相まって、見ていてとても気持ちのよいものだった。いいねーーーー。せっかくなので記念撮影。そして「お賽銭は放り投げちゃいけない」と、ぽーんと放った私に注意する友人。大仏様はでかすぎて、お賽銭箱からは台座しか見えないのがまた気を惹かせるものがある。そうか!日本一の大仏様はそう簡単に見せないぞ〜ってな訳で、お気楽ロープウェーの客にもこんなに歩かせてぜえぜえ言わせて汗をどっしゃりかかせて、ありがたみ十倍。ご利益百倍。みたいな気分にさせる演出もあるかもな。


 売店(というかお守りとか売ってるとこ)も見てみたら種類はあるものだ。湯島天神みたいにキティーがいた!ってわけでもなかったような気がするけど、とにかく私が一番気になったのは隅っこにひっそり置いてあった「梅干し 1000円」だ。お寺でとれた梅をお寺で梅干しにしたらしい。うまそーーーー!!!うまくない訳がない!!と思ったが「別にお寺は梅干し造りのプロじゃない」という友人に一蹴された。ちなみに仏教発祥の地はかの国インド。ブッダガヤーという所に日本寺というのがあるのが関係しているのかしていないのか、インドから贈られた木が植樹されており、インドのシンボル、4面ライオンのミニチュアがあった。こんなとこでインドにまた出会えるとはね。木はなんだか枯れ細っちゃって、あれ?どこ?って感じだったけど。


 さて帰り道。ペトラ遺跡の脇に「下山口」というのがあったので、意気揚々とそちらへ向かう。今から思えば不思議だが、たかがお寺の出口に「下山」ってねえ、おおげさじゃない?と思うのが普通だったかもしれない。そこから降りようとすると、切符売り場のおじさんが「ここから下りてくつもり?!  足下に気をつけてねえ」と送り出してくれた。さっそく出くわしたのは、上下おもいっきり登山ルックな父子。対して自分たちはちょっと飲み会にでも行くくらいの気楽なシャツにズボンにそこがツルッツルの靴である。しかも、天候は小雨。。。


 父子に会った場所は二股になっていてどっちかな?と思ったので父子が上ってきた方面に進んだ。ら、崖の絶壁になっていた。柵もない。あわてて引き返し正しい道へ。いきなりあらわれたのは岩を削ってできた超急な階段で、ツルッツルに滑るので、あわや大惨事、とか言いつつ悲鳴をありながらゆっくり下りる。手すりが両側についているが、ごく最近設置されたものみたいでピカピカしている。手すりがなかったらきっと転げ落ちていただろうなあ。この先めくるめくアドベンチャーが続くのだが、長くなるので1つだけお勧めスポットを。


 「←絶景」という看板が現れたので遠回りになるのを覚悟でそちらへ行ってみる。鋸山は1980年代まで石切り場として栄えていた場所で、一時期はこの町の8割もの人が石切を仕事としていたらしい。なのでロープウェイからも見れるし、地獄のぞきのあたりからもわかるのだが、崖というのは岩を削った後が残っているのだ。そのきちっとしたキレ具合にはほれぼれするほど。そして絶景ポイントというのは今度は岩を削った崖を下から見られるという場所だった。明らかに人為的な、でも自然じゃないとは言い切れないその曖昧な迫力に飲み込まれる。ここはさらに声が反響し、歌を歌うとなんだか上手に聞こえそう。元ちとせなんかがここでコンサートをやったりしたらとてもきれいなんじゃないかな。小さな舞台状のものとベンチ状のものがあったし。ベンチ状のものは朽ちてたけど。近くの看板によると、「大隈講堂の石垣にも使われています」と書いてあった。ここから持ってきた石がねえ。講堂前の床とか脇の柵とかがこの石なのかなあと想像する。やっぱり大きな大学というのはいたる所に思わぬ所以があるのがおもしろい。


 結局かなりの時間をかけて下山を完了した。途中には「ハイキングコース」と書いてあったが、しまいには「登山口」との看板も登場し、してやられた!という感じはしなくもない。電車の音が聞こえ、アスファルトの道路が見えた時には雄叫びをあげたが、ひざががくがくしてまともに歩くのに時間を要した。くらい疲れたー!Tシャツじっとり。


 とまあ、想像以上に大変な大仏見学となり車庫入れの練習どころじゃなかったわけだけど、最終的に「来て良かった!」と思える場所でもある。大仏を見るという目的で山登りを疑似体験でき、そして崖からの景色は非日常そのもの。日本式ディズニーランドだよねーとも言えなくはない。ガイドブックに載っているんだか知らないが、やたら外人が多かったのもうなづける。「東京はもうアキタネー」という外国人をぎゃふんと言わせるにはかなりお勧めのスポット。そしてちょっとマンネリ化してきたデートを打破するにもいいところ。しかし、往復ともロープウェイを使いましょう。男同士なら徒歩下山もアリ。近くに温泉あるし。


鋸山案内 日本寺