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東京在住 アラサー社会人の備忘録です。

河童が覗いた「仕事場」

 寮に暮らしているので、本の数が限られる。好きな本は何冊か持って来てあったんだけど、そもそも一度読んだ本をもう一度読むって習慣がないから?感動をすぐ忘れてしまうから?二度目を読んだ事ってほとんどなかった。がしかし、英語版のカフカも読み終わったし、インドで買ったIT HAPPENED IN INDIAという、近代的なスーパーマーケットの進出物語(それほどおもしろくはなかった)も読み終わって読むものがない。韓国語の教科書はあるけど、言葉は使わないと勉強する気がしない。というわけで、持ってきてあった文庫本に手をつける。


 第1弾がこれ。いろんな人の書斎とか仕事場を覗いてみたという話がオムニバス形式で2〜4ページ毎くらいに進んでゆく。これのおもしろいのは、陶芸家とか画家とか、美術関係の人間が大いにしろ、医者とか、気象庁とか、普段足を踏み入れるなり、話を聞く事が少ない人の仕事場も読めること。手術は受けた事ないし、でも手術室のあれやこれやという施設はいったいどうなっているのか気になる。例えば歯医者に行った時、自分の歯形が欲しくなったり、ドリルの先っちょってどうなってるんだろうと思ったり、なんであのライトはあんなガムの包み紙みたいな光り方をするんだろうとか、やたら興味を持つんだけど、普段は無理して抑制するじゃない。だから、この本は読んでいておもしろい。


 さらに、登場する人みんながみんな変わり者。というか、好きな事を好きなだけしているというか。締め切りの迫った作家が編集者に「またあとで呼び鈴ならしてください」と伝えて、編集者がまた行ってみたら、呼び鈴がもぎとられていたという話とか。思わず笑ってしまう話がちらほら。若干説教臭いコメントもあるけど、完全に観察者にはなりきらない作者と、完璧な客観性を持った緻密な絵が同居する。


河童が覗いた「仕事場」