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東京在住 アラサー社会人の備忘録です。

マレーシア映画って

mokich2007-08-01


 映画の世界では今まで、アメリカは娯楽映画(ハデな爆破とかありもしない謎の生命体が出現したりして、いわゆるマッチポンプ)、ヨーロッパが芸術映画(生活文化そのものが芸術みたいな面もあるだろうからか、感性が磨かれているのか)、そしてアジア映画は学習対象とするような歴史映画(戦争の悲劇だとか、過去の事実をもとにそこから学び取らせようとするやつ)と言われていたらしい。それがだんだんと経済発展にともないアジア地域では娯楽性とか芸術性も入り交じるようになった。とかいう話をアジア映画論という授業で聴いた気がする(後半は適当)。


 んで、先生にもらったチケットでヤスミン・アハマドとマレーシア映画新潮という、御茶ノ水アテネ・フランセでやってるのに行ってきた。見たのは「ムクシン」「グッバイ・ボーイズ」「私達がまた恋に落ちる前に」の3本。本当はあと2本くらい見たかったんだけど都合上無理に。
 マレーシアの映画なんて見た事ないし、蒸し暑そうだし、タイみたいな感じかなーと思ったけど、結構がんばってる感じがした。まだ形としては完成してないけど、試行錯誤を繰り返しているという感じが伝わってくるというか。挑戦の真っ最中です!という雰囲気。


 イチオシは「ムクシン」。この企画自体がヤスミン・アハマドという監督をフィーチャーしたもので、入れ替えで上映される9本の映画のうち4本はヤスミンのものだ。この4本は1人の少女の成長を追いかけて幼少期、小学生くらい、青春期、そして結婚というふうな具合にその時々をストーリーにしたものらしい。そのうち2本見たかったんだけど1本しか見られたかった。が、私が見た「ムクシン」は少なくとも結構よかった。全体的にマレーシアの素朴な、のんびりした感じが漂いつつも個々のエピソードはそれなりにエグくて、時々ジョークも忘れない。もう1本のおすすめは「細い目」。と先生が言っていた。


 他の2本はまあ。って感じだったけど。ちょっと見ていてバテちゃうっていうか、ああ時間経つの長いなあと思わせる時間割だった感じも否めない。けど発展途上の今の様子を観察するという意味では楽しめるかも。グッバイ・ボーイズは100キロを歩いてゆく少年達が心の中で葛藤を繰り返すという感じなんだけど、「たかが100キロで5日間もかけて歩くのに、その疲れっぷりはおおげさ!」と最初は思ったが、我らが百ハイとは環境が全然違うっぽい。なんか鉱山地帯とか山道っぽいとこが多数出現して、いやあこれは辛いわ!と。マレーシアは中国系の人が多いからか、映画の中にも中国系俳優とか、中国語とマレー語と英語が混ざって話されていたりするのがおもしろい。「私達が〜」の方では突然日本人が登場したりするのがおもしろかった。クレジットでは「日本籍の男」みたいな感じで書かれていた。


 チラシを見ていて気づいたけど、フィルムの詳細に制作年とカラーか否か、監督名は当然としても、フィルム形式まで書いてある。今回の場合は35mm orBetacam。35mmはご存知の通り、ぐるぐる回る古くからあるフィルムテープ形式だ。Betavamというのはいわゆるデジタルビデオだと思う。基本的には気にならないけど、シーンによってはざらつきが見えたり、全体的に色見に限界がありそうとか、のっぺりと見える事もある。個人的には35mmの方が好きかな。ただ、デジタルカメラが登場した事で機材も安く、パソコンで編集して、それをネット上で発表する、というような制作から発表までのフローがめちゃめちゃ簡単になって一人だけで完結する事も難しくなくなった。これによりだいぶ映画界が変わってきたとも言えるから、一概に悪いとは言わないけど。だってドしろーとの私だって大学の授業で10分くらいの映画もどきを3ヶ月あれば最初から勉強して友人と一緒にテープとって、パソコンに読み込んで編集してDVDに焼き付ける。って事ができるようになるのである。これがあと10年早かったらものすごくお金もかかっていたし、手間も人数もかかるものだったんだろうなあと思う。


 アテネ・フランセでのこの企画は今週土曜日まで。滅多にお目にかかる事のないマレーシア映画。ちょっと涼みがてら800円で試してみては。ちなみに、アテネ・フランセの建物自体も摩訶不思議な空間になっていて、不思議感だけで言えば「地下鉄のザジ」みたいな、フランス映画みたいな雰囲気を彷彿とさせるような気がする。英語とかも勉強できるらしい。たまたま覗いてみた教室ではフランス人男性とおぼしき先生がフェミニンな感じに話していた。あれがモテフェロモンか。

ヤスミン・アハマドとマレーシア映画新潮